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第三号・2000年7月1日

やましろ芸能曼陀羅
八月十日(木)〜十六日(水) 午後八時〜
服部神社前特設舞台
加賀の芸能や多彩なイベントが開催されます。
とくに十一日・十二日、和泉流狂言師・野村万之丞
プロデュースによる楽劇「山代大田楽」が圧巻です。


■女将の風信帖3

■エコツーリズムの入口でー敷田麻実
女将/ 身のまわりには、いろいろ不安なことがあるけれども、自然や環境が破壊されて、このままだと地球がダメになってしまうんじゃないかしら、という恐れを強く感じるのですが。
敷田/ どのレベルで持たすかとなると、ずいぶん意見がちがってきますが、今のレベルで持たす努力をしたいですね。それで、温泉に関連すると、エコツーリズムという、環境に負荷を与えずに使うという発想がありますよね。今までのマスツーリズムじゃない観光をしたいという人が増えています。私の仕事場の沿岸域での調査、輪島の舳倉島や加賀の鴨池観察館のバードウォッチャーに関する調査は、エコツーリストを対象にしています。
女将/ 先生のお仕事は奥が深くて楽しそうですね。生きているものが相手ですから。
敷田/ たとえば鴨池では、ほとんどの方が二〇分ぐらいしか滞在しない。すると、逆に二〇分で鴨池の良さをわかっていただけるような見せ方をしないといけない。見るのに二時間もかかる立派すぎる展示だけではダメなんです。ということを考えていかなければならないんです。
女将/ 凝縮された時間にキチンとしたものを伝えないといけませんね。
バイガイつぼ煮
バイガイは、腹足綱(巻き貝類)エゾバイ科に属するバイの通称。日本海では古来よりバイ籠漁が行われています。石川県でとくに好まれるエッチュウバイは、水深250〜350mの深海底に生息し、大きいものは10cmにもなります。刺身やつぼ煮、おでん種など親しみ深い貝で、初秋になるころ貝身の旨味も増してきます。
敷田/ 自然環境がどれだけすばらしくても、それを見たり触れたりするのはわれわれの方なので、そっちの方を調べないと、半分抜けているのと一緒ですからね。旅館の仕事も同じだと思いますけど、リピーターほど環境とコミュニケーションしてもらえるわけで、いかにそういう人を増やしてゆくかというのが非常に重要になります。
女将/ そうですね。いかに次につなげて来ていただくかということが勝負です。一泊二食の間に、どんなものを持って帰っていただくかということ。ともかく、リピーターの方が私どもの良さを伝えてくださることになりますから
敷田/ このエコツーリズムに参加される人は不思議なんで、遠いところであればあるほど、行きづらいところであればあるほど、出かけたがる。要は、距離とか時間は関係なくなるんですね。目的だけが大切で、あらやさんに行きたいとなれば、北海道からでもニューヨークからでもいいんです。
女将/ そうかもしれません。この間もニューヨークから来られて三泊された方がいらっしゃいました。私どもは結構、福岡や札幌から来られる方も多いんですが、やはり、同じ条件になるわけですね。
敷田/ で、調査してみると、ほんとに微妙ですね、良かったと思っているところは。全体を評価して、理論的にこうだと分析して良かったと思っている人は非常に少ないですね。ほんの一瞬の何かに満足できたので、今度の旅はいいと。それが決定的で、あとまで尾を引くんです。
女将/ 私どもも、「いらっしゃいませ」で八五パーセントが決まるといわれます。だから、第一印象というのはすごいものです。人間には、その一瞬が永遠なんですね。それに雨の文化というのは室内の文化を育むと思うんです。
敷田麻実しきだあさみ
金沢工業大学 環境システム工学科助教授
日本の生態系というのは、非常に生産性が高いんです。木を伐ってもすぐに生えてきますからね。それだけ豊富に餌や生息場所を提供することになるので、それをうまく利用するものが外から入ってくると、いっぺんに蔓延するわけです。たとえばブラックバスやセイタカアワダチソウみたいに、生態系や景観を壊してしまうんですね。だから、まず身のまわりの自然を大切にすることが重要です。
永井朝子ながいあさこ
あらや女将
沙羅双樹や松の銘木を移築して枯らしてしまって、ほんとに申しわけなくて。でも、こんな鬱蒼とした庭でも、お客様は、今度は桜の時季に、今度は紅葉のころに来てみたいと言ってくださるんです。だから、何もないこの部屋から見える小さな自然というのが、そんなにすごいものかと思ってうれしくなります。
■私の加賀名所
■窯の道/出島二郎(プロデューサー・金沢在住)
旅の土産には茶碗がいいよ。といったのは建築家のMさんだ。調査旅行で沖縄へ出かけた帰りだったかもしれない。二〇年も前のことだが、この言葉はよく覚えている。その時も、むろん茶碗を買ったし、その後、旅に出ると鞄に茶碗が入ることになった。といっても上等のものではなく、五〇〇円か千円の飯碗にすぎず、それも一個か二個なのだ。安物でいいんだよ、ただし、その土地の焼物が望ましいけれどね。Mさんの助言は、こういうことだったのである。
わが家には、こうして、あの町この町の無名の茶碗のコレクションができた。考えてみると、朝晩、旅の記憶を食べることになるわけで、写真よりはるかに良好なアルバムといえるかもしれない。Mさんの眼目もそこにあって、東南アジアの各地を歩いているMさんの食卓を旅の村の朝を詰めた各種の茶碗が飾ることになっている。
山代温泉は、焼物の町でもある。鬼才・北大路魯山人は、この町で陶芸の修行に入った。師は初代須田菁華。その菁華窯は、あらやから数分のところにある。この宿にくると、私はときどき魯山人ゆかりの場を見て歩いている。というより、魯山人が徘徊したであろう路の気配を感じたくなるのだった。魯山人が絶賛したという「山代たくあん」の話を古老に教えられたりしながら。
今朝は、菁華窯四代の作品をギャラリーのガラス越しに眺めている。町はまだ眠っている。作品の赤・青・黄の色が静かに呼びかけてくる。私の友人の作家たちは、山の中にアトリエを構えることが多くなった。作陶の条件が厳しくなったからだ。また、樹木に囲まれた環境を好むためでもあるが、私は町中の路地裏の閑寂な部屋で、黙々と絵付けをする陶工の姿に畏怖心を覚える。
現在、山代温泉では、吉田屋窯の修復保存がすすめられているが、古い窯のある空間には独自の時間が流れている。火は時間を溶解させるものかもしれない。
それが旅の時間と似ている気がする。
■須田菁華窯
加賀市山代温泉東山四 電話〇七六一‐七六‐〇〇〇八

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